最期に最高のねぎらいを... 湯灌士の想い
「湯灌(ゆかん)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。湯灌とは、故人様を棺に納める前に身体を清め、旅立ちの身支度を整えること。身体を清潔にするだけでなく、この世の煩悩や穢れ(けがれ)を洗い清め旅立つという意味合いも込められた儀式でもあります。昔は家族で行っていたこの儀式は、今では葬儀社のスタッフが行わせていただくことが主流となりました。ティアでも、主に子会社ティアサービスにおいて湯灌を担当する「湯灌士」が対応させていただいています。今回は、湯灌士として長いキャリアを持ち第一線で活躍する川尻さんに湯灌士という職業について、また、故人様やご遺族への想いや後進育成などについてお伺いしました。
ー日常ではあまり関わることのない湯灌士という職業を志したきっかけは?
湯灌士としてのキャリアは、もう二十年以上になります。姉が湯灌士として働いておりその背中を追いかけるように始めたのがきっかけです。もともといた会社がティアの子会社となりティアグループとなりました。
ー1日の業務の流れを教えてください。
ティアでは二人ペアでご対応させていただいています。日によってペアを組む方は変わるのですが、通常2件~3件、多い時で4件ほどの湯灌をさせていただくことがあります。湯灌はご遺族がお立合いのもとで行わせていただくことも多いので、緊張感のある中で故人様、ご遺族に決して失礼が無いよう細心の注意を払って行います。そのためか、悪い意味での慣れはないですね。故人様もご遺族も毎回違いますし、「日に新た」の気持ちで自分を深められる仕事だと思います。
ーご担当される上でのこだわりはありますか?
故人様の中には、長い闘病生活を経て亡くなられた方も多くいらっしゃり大変お疲れだったろうなと思うことも多いです。これ以上のご負担をおかけしないように手早く湯灌をさせていただき、ご遺族と最期の時間を持てるように心がけています。湯灌の儀の中で、故人様を一緒に撫でたり、逆さ水※で清めていただいたりしていただくようご遺族の方にお声をかけることもありますね。泣きながら故人様のお身体を清められているご遺族のお姿を見ると、ついこちらも泣けてしまうことがあります。ビールやお酒がお供えしてあると、「お風呂上がりにビール」のような感覚で「お疲れ様でした!」と故人様の口に少しお付けして、ねぎらわせていただくことも多いです。
※逆さ水:通常ぬるま湯を作る手順(お湯に水を足してぬるくする)とは逆に、水にお湯を足してぬるま湯を作る水のこと。
―大ベテランの域の川尻さん。後進の育成にもお忙しいのでは?
湯灌をさせていただいている中で、ご遺族から宗教知識などを聞かれることがあります。いつどんな質問にも答えられるよう自分なりにまとめた資料を作っているのですが、後輩にコピーさせてほしいと頼まれるようなことがあると嬉しいですね。私の作った資料を常に持ち、よく見返してくれる後輩もいるみたいです。自分の子どもよりも若いような後輩もいますが、ペアで組んだ後にその日の反省や、感想を言い合う時間はとても好きです。ペアを組んだ相手にも「一緒に仕事できて勉強になった。」と言ってもらえると、自分の仕事から伝わるものがあって良かったなと心から思います。
〈自作の資料を紹介する川尻さん〉
ー今後についてお聞かせください。
体力が続く限り、まだまだ現役!と思っています。目標は70歳までこの仕事を続けることですね(笑)。
70歳までと言わず、生涯現役でもいけるのではないかと思うほど元気な川尻さん。一つとして同じものがないご葬儀に携わる様々な立場のスタッフの想いが「ティアの葬儀」を作り上げていることを改めて実感します。ティアグループとして、それぞれのスキルや個性を生かしながら長く働く環境を整備していきたいと考えています。