海外搬送~よりスムーズに母国に帰すために~
日本で暮らす外国籍の方が年間どれくらい亡くなるかご存知でしょうか。令和2年の厚生労働省の人口動態調査によると、年間約7,800名の方が日本の地で亡くなっているそうです。また、外国で亡くなる日本人の数は1,400名ほどいらっしゃいます。私たちティアは、全ての方に大切な方としっかりお別れする場を提供することを社会的使命の一つとして捉えています。今回のTEAR'S STORYは、異国の地で逝去された方をスムーズに母国に送り返す、そのために日々全力を尽くすスタッフをご紹介します。
海外搬送とは、葬儀の世界では異国の地で亡くなった方の火葬を行わず、ご遺体のまま母国に送り届けることを指します。今、この記事を読まれている方の中には、ご遺体を飛行機に乗せて長時間移動させることができるものなのか疑問を持たれた方もいるかもしれません。それを可能にするのが、エンバーミングという技術。ご遺体に防腐、消毒・殺菌処理を行うことで保冷剤を使うことなくご遺体の長期保存を可能にする技術です。海外にご遺体を運ぶ際にはエンバーミングが必須であり、海外搬送とエンバーミングは切っても切れない関係にあると言えます。
ティアグループでは、子会社である株式会社ティアサービスでエンバーミングを承っており、この技術を活かしながら海外搬送にも対応しています。エンバーミング技術を持つエンバーマーの中神さんは語学も堪能な貴重な人財。海外搬送ニーズが出た場合にはエンバーミング技術と語学力を活かしながら様々な事態に対応をしています。海外搬送のエキスパート、中神さんにお話を伺いました!
ー中神さんご自身について教えてください。
ティアサービスに入社したのは2021年ですが、その前からエンバーミングにはずっと携わっていました。世界屈指の技術を持つ米国においてエンバーミング技術を学びライセンスを取得したのが1996年。それ以来、様々なところでエンバーマーとして仕事を続けています。海外生活が長く、英語でのコミュニケーションは問題なく対応できるので海外搬送なども任されてきた、という感じです。
ーティアで承っている海外搬送の実態について教えてください。
国外で亡くなった日本人の対応に比べ、国内で亡くなった外国籍の方を母国に送り届けるケースの方が圧倒的に多いです。最近は海外からの技能実習生や留学生などが増加したことにより、人数もさることながら、昔に比べ対応する国や地域が広がっているのが現状です。ティアサービスではおおよそ月に1件、多い時だと3件ほどの海外搬送のご対応をさせていただいていますね。
ー外国籍の故人様ならではの難しさなどはありますか?
その方の宗教や文化を考慮して、適切な対応をする必要があります。例えば、イスラム教は戒律で死後に行わなくてはならないことが沢山あります。エンバーミングを終え、母国に送り返す前に故人様をムスクに連れていく必要がある、などです。また、日本では手を組ませるのが通常ですが、手は組まないという宗教もあります。それぞれのあり方に従いながら母国で故人様に対面した時に、ご家族・ご友人の方が驚かれたり、ショックを受けたりしないように神経を使います。
ーティアの海外搬送の特徴について教えてください。
いくつかあるのですが、まずリーズナブルなこと。これにはちゃんとした理由があります。海外に搬送する際、飛行機に乗せる場合の運賃は重さ(重量)と比例します。重ければ重いほど、コストがかかってくるのです。重たくなる一つの要因は、海外搬送用の棺。この棺の軽量化を徹底的に行うことで、運賃の大幅な削減につなげました。従来の棺は100kgを超えるような重さがありましたが、強度を変えず軽量化を図ることで重さ半分の棺を実現しました。また、軽いだけでなく、簡単に組み立てられることや道具を必要としないネジの採用などこだわりにこだわっています。
あと、もう一つはティアグループとして葬儀会館を持っていることで、故人様が母国に帰る前にお別れの会などを開催できるのもティアならではのポイントかなと思います。日本で海外搬送を対応している先が必ずしも葬儀社なわけではありません。エンバーミングを施した上でお別れの会を行い、母国に帰る、という一連の流れを一気通貫で行うことができるのは喜ばれることが多いです。
―中神さんにとって忘れられないエピソードはありますか?
2年くらい前にナイジェリアの方をご対応させていただいたことがありますが、お別れの会を開催した時に200名ほどの方が参列をされたことがあります。予想では数十名程度だと考えられていたため、てんやわんやになったことがありましたね。その地域でのコミュニティが大きかったり、異国の地でも様々な人間関係を作りながら生きてこられた方だったのだろうなと思います。
―この仕事をされていて嬉しかったことはありますか?
ご遺体が無事にその方の母国に到着した時に、受け入れ側のエンバーマーの方から、とても綺麗な状態でご遺体が到着したと聞かされる時でしょうか。気圧の変化や揺れなど、様々な悪条件のもとでご遺体をお運びするわけですから無事に到着したのか、ご遺族やご友人の方ときちんと対面できたのかなど、送り出す側は気がかりでなりません。そのような中で、互いにプロの仕事をする同業の方から「きちんと処置を施してもらったことで、ご遺体も良い状態で母国に着けましたよ。」と言われるのは、この仕事をしている中での最上の喜びの一つです。
今後、日本で暮らす外国籍の方や海外で暮らす日本国籍の方はさらに増加し、同時に海外搬送の需要も増えていくことが見込まれます。異国の地で人生を終える方が、ご家族・ご友人ときちんとお別れができるようティアグループとしてもさらに体制を整えたいと考えています。
★ティアグループの海外搬送について詳しくはコチラ