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「最期の、ありがとう。」ティア
大阪市福島区

ご遺族の想いを、葬儀に込めて。温かくて小さな最期の贈り物。

担当者
大山 易志
施行会館
ティア覚王山

明るく笑顔で送りたい。
母を愛する喪主様の想い。

その葬儀は、以前もティアで葬儀をしていただいたことのあるご家族からのご依頼でした。前回のティアの葬儀に満足していただいているからこそ、期待も高いだろうと気を引き締め、担当しました。

故人様は93歳で亡くなられた女性。大往生でしたが、長い闘病生活が続き、苦しい想いをなさっていました。2人の娘様がいらっしゃり、喪主はお姉様。お打合せは、故人様の人となりなどを記入していただく事前アンケートをもとに、お姉様と妹様からいろいろとお話を伺いました。

19歳でご結婚され、旦那様とともに民謡や三味線を習っていらっしゃったこと。婦人会や道路清掃のボランティアに熱心に取り組まれていたこと。お料理上手で、洋食が珍しい時代にロールキャベツをよく作られていたこと。何よりも盛り上がったのはお寿司の話。「お母さん、お寿司が大好きで、納屋橋の『かんだ寿司』によく行ったわね」と懐かしそうに、うれしそうに話す2人の娘様の姿から、病と闘うお母様を見守り続け、「亡くなった母を明るく笑顔で送りたい」という想いとお母様への愛がひしひしと伝わってきました。

花の位置にもこだわって、式場レイアウトは華やかに。

「身内だけの少人数で、こぢんまりと家族葬を行いたい」というのがご要望でした。

私は通夜から葬儀までの2日間、まずご遺族様に心配や不安をおかけしないよう、しっかりと段取りをします。そして、ただ故人様のことを想い、ご遺族やご友人と故人様との想い出をゆっくりと語り合っていただけるような空間や環境を作ることに集中します。

特にシンプルなプランのときこそ、いつもより式場のレイアウトにはこだわります。協力会社に花を並べていただいた後、私は、正面から、側面から全体を見ました。花の位置が違うだけで、式場の印象がまったく変わるからです。喪主様の席、ご家族やご親族、参列者が座る席、実際に座ってみて、それぞれの視点から花や祭壇、棺の配置バランスを確認します。棺と枕花との空間を少し離すと、華やかさが増しました。

式場が整い、あとは「当たり前のことを、当たり前にやるだけだ」と自分に言い聞かせ、通夜、葬儀に向き合いました。

故人様と喪主様を思い浮かべ、手作りの三味線を。

通夜を無事に終えた帰り、車を運転しながら、打合せのときのことを思い返していました。2人の娘様の想いを、明日の葬儀に注ぎたい。私は、車を回転寿司のお店の前に止めました。故人様のよく行かれていた「かんだ寿司」はなくなっていましたが、大好きだったお寿司は用意できます。1人前のお寿司を彩りよく選び、買って帰りました。

もう一つ用意したいものがありました。それは、紙で作った手作り三味線です。棺に本物の三味線を入れることはできません。しかし、紙で作ったミニチュアの三味線ならば入れることができます。私はこれまで、故人様の趣味や思い出に合わせて、カメラやゴルフクラブ、マイクなど、いろいろなものを作ったことがあり、クラフトは得意でした。開式の数時間前に、故人様と娘様が喜ぶ姿を想像しながら、三味線とバチを作りました。

お別れのとき、ご遺族の皆様が棺に花を手向け終えると、故人様はたくさんの花に包まれました。美人でいらっしゃった故人様は、今にもよみがえりそうな美しい表情をされていました。私はそこで「よろしければ、故人様がお好きだったお寿司と、三味線を入れてあげてください」と、紙皿に乗せたお寿司と小さな三味線とバチを渡しました。2人の娘様は驚き、とてもうれしそうに「ありがとうございます」と受け取ってくださいました。その後、愛おしそうにお寿司をお顔のそばに、三味線を胸元に納めました。

すべてを無事に終え、喪主様がお帰りの際、私のところに歩み寄り、「担当が大山さんで本当に良かった。ありがとうございました」と笑顔でお礼をおっしゃいました。「私の方こそ、この葬儀を担当させていただいて感謝の気持ちでいっぱいです」と深くお辞儀をしました。

しばらくして、葬儀後にご遺族にお答えいただくアンケート用紙が手元に届きました。そこにはこう書かれていました。「93歳の母が、たくさんの花に囲まれて、美しかった昔のように、本当に本当に、きれいでした」。私は何度も読み返しました。喪主様の故人様に対する想いを込めた葬儀ができたのだろうとホッと胸をなでおろしました。

担当者想い

担当者:大山 易志

担当者想い

普段しないことでも、やれるようにしておくのがプロの仕事。

実は、喪主の息子様は葬儀会社でお勤めになっている方でした。同業ならではのご要望がいくつかあり、大変な部分もありました。しかし、お客様のティアの葬儀への期待を超えなければ「ありがとう」と言われる葬儀はできません。普段しないことでも、いざというときにやれるように準備しておくのがプロだと思っています。そういった点でも、私が培ってきたものを最大限に発揮できた葬儀だったと思っています。