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「最期の、ありがとう。」ティア
杉並区

故人様の信仰を大切に、知識とおもてなしの心を生かしたプロの葬儀。

担当者
吉原 誠
施行会館
ティア御器所

「ご安心ください」。
突然の葬儀変更にも落ち着いて対応。

「吉原さん、実は母の宗教は天理教だったんです。できれば天理教の葬儀で送ってあげたいのですが、今から変更できますか?」

故人様とともに暮らしていた娘様が、遠慮がちに打ち明けられたのは、通夜当日の打合せ時でした。喪主はその娘様のお兄様で、その隣で静かに座っていらっしゃいました

当初は真宗大谷派、つまり仏式の葬儀をご希望されていました。天理教の葬儀は、仏式とはまったく異なる上、その形式も地域や教会によって違いがあります。しかし私は動じることはありませんでした。故人様が信仰されていた宗派で、葬儀のお手伝いをさせていただきたいという想いを込め、「ご安心ください。すべておまかせください」と自信を持ってお答えすると、おふたりはお互いを見あって、安堵の笑顔を浮かべていらっしゃいました。

私は「なぜ初めから、天理教での葬儀をご希望されなかったのだろう」と考えました。喪主様は、親元を離れ、兵庫県西宮市でご家族と住まわれており、ずっとお母様の世話を妹様にまかせっきりで、最期を看取ることもできず、自らを責めているような趣がありました。故人様の信仰していた天理教について知識がなく、仏式を選ばれたのかもしれません。しかし妹様とご相談され、「近親者だけで、母が信仰していた天理教の葬儀で、温かく見送ってやりたい」と思い直されたのだろうと想いをめぐらせました。「喪主様やご遺族に寄り添い、絶対に後悔のない葬儀にしよう」と気持ちを引き締め、すぐに準備に取りかかりました。

天理教の葬儀は多くはないため、道具は複数の会館で共有しています。まずは離れた場所にある倉庫から道具一式を運ばなければなりませんでした。時間との戦いでもありましたが、これまで培った知識と経験を生かし、スタッフ全員が心をひとつにして設営を行い、厳かに通夜(みたまうつしの儀)がはじまりました。

不安を抱えた喪主様とご遺族に寄り添って。

天理教では、斎主様が式を執り行います。お祓(はら)いの言葉の後、故人様の身体から魂を移すための儀式「みたまうつし」が行われ、神前にお供え物が置かれます。その後、仏式でいう焼香にあたる「玉串奉奠」で、ご遺族の皆様が玉串を持ち、お一人ずつ神前に捧げます。喪主様はじめご家族の皆様も、天理教の葬儀は初めてで、不安を持っていらっしゃいます。ですから私は、一連の儀式の間、ずっと喪主様の目の届く場所に立っていました。特に不安の大きい喪主様に、ご安心いただくためです。

故人様の人となりをお話しするナレーションは、私が行いました。会場を暗転し、事前にお伺いしていた故人様のことを綴った原稿を読み上げました。教室で指導をお願いされるほど編み物が上手だったこと、甘いおまんじゅうが好きだったこと、世話好きで隣に住む子どもの面倒まで見ていたこと。明日の最期のお別れまでにはまだ時間があるためか、少し心にゆとりがある雰囲気の中で、ご遺族の皆様の故人様を偲ぶ気持ちが一つになった瞬間を感じ、私自身も胸がいっぱいになって言葉に詰まりながらも、お一人おひとりの心に伝わるよう、丁寧に読み上げました。

「吉原さんのおもてなしを忘れません。」

葬儀の日、故人様の思い出の品を飾る「思い出コーナー」には、可愛らしくデコレーションされた写真や、故人様の好きだった編み物の作品や毛糸、カギ針などを入れたバスケットなどが華やかに飾られました。故人の娘様やお孫様が心を込めて飾られたものです。

ご遺族と数名のご友人だけで、葬儀は滞りなく進みました。最期のお別れの際、花を棺に手向けた後、折り紙をちぎって画用紙に描いた「ありがとう」の文字を、そっと喪主様にお渡ししました。最期を看取れなかった喪主様が伝えたかった言葉は「ありがとう」に違いない。喪主様に後悔していただきたくないという想いを形にしたいと、朝早く起きて私が作ったものでした…。常に気丈でいらっしゃった喪主様の目から、涙がぼろぼろとこぼれていました。

最後の会食の時、喪主様のご挨拶を、私は後ろで聞いていました。参列の皆様へのお礼の後、突然私を振り返って「宗派の変更も快く受け入れてくださり、豊富な宗教知識の深さや心遣いに驚かされました。プロ中のプロ、吉原さんのおもてなしは、絶対に忘れません。ありがとうございました」と、皆様の前でお話になりました。名指しでお礼の言葉をいただいたのは初めてでした。急な葬儀の変更で不安だったご遺族に寄り添い、真摯に対応することができたからこそいただけた感謝の言葉に、思わず涙が出そうになりました。「私の方こそ、皆様のお手伝いをさせていただき本当にありがとうございました」と心の中でそっとつぶやきました。

担当者想い

担当者:吉原 誠

担当者想い

葬儀のプロであると同時に、おもてなしのプロでもありたい。

葬儀を担当させていただく際、私は常にお客様との会話に耳を傾けます。それは故人様の信仰、想いを含めてどんな最期を望まれていたのかを知るためです。そしてご遺族にそっと寄り添いながら、さりげなく、しっかりとおもてなししたいと思っています。そのために、葬儀の知識を深めること、故人様やご遺族の想いを汲み取ること、この2つの重要性を改めて実感しました。私は葬祭ディレクター1級の資格を有しており、今回の葬儀では、その知識や経験を生かすことができたと思っています。

厚生労働省認定葬祭ディレクター技能審査を指す。葬祭業界に働く人にとって必要な知識や技能のレベルを審査し、認定する制度。葬祭ディレクター1級は最高資格で、学科試験、作業試験などをクリアし、すべての葬儀における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの詳細な知識と技能を持つ。