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「最期の、ありがとう。」ティア
北本市

住み慣れた家で見送る、身内だけの温かな葬儀。

担当者
尾形 孝治
施行場所
自宅

家族と親族だけで、ゆっくりと見送りたい

ウェブサイトから資料請求をされたお客様から、後日、お電話をいただきました。「事前に相談したいから、うちに来てくれないか?」。

私は、お急ぎなのかもしれないと思い、すぐにお伺いしました。場所は、風情が残る東京の下町。4階建ての一軒家で、お父様とお母様の2人暮らし。余命わずかであるお父様の葬儀を、住み慣れた家で、ゆっくりと行いたいという息子様からのご要望でした

お父様は、この下町で、紙製品を製造する会社を一代で築き上げられました。お金を無駄に使わず、コツコツと勤められた実直な方でした。葬儀にはお金をかけなくていいというお父様の意志も受け継いで、自宅葬で送りたいとのことでした。

近年では、めっきり少なくなった自宅葬であっても、柔軟に対応できるのがティアの強み。さっそく、長男である息子様、長女様夫婦と詳しく相談をしました。式をどの部屋で執り行うか、お供え物や食事などはどうするかなど、部屋を見せていただきながら一つひとつ決めていきました。

その翌々日、お父様は病院で息を引き取られました。

ご家族とともに作る、手作りの葬儀。

通夜は、お父様がお亡くなりになった次の日。ご自宅の3階で行われました。

道具一式を運び、ご親族に高齢の方が多いため、絨毯を敷いて椅子を並べました。ご家族の皆様が式の準備のお手伝いをしてくださり、「椅子の配置はどうしたらいい?」「隣の部屋を休憩所にしてはどうか?」など相談し、協力しながら、式場をともに作り上げていきました。

しばらくして、ご親族がお集まりになりました。久々に訪れる方もいらっしゃり、「懐かしいな。街もずいぶん変わっちゃったね」などと話し合われている様子に、ご親族の絆の深さを感じ、式場は温かな雰囲気に包まれているようでした。

お父様のご遺体は、通常は棺にお入れするところ、ご自宅で使われているベッドに白い布を敷いてお寝かせました。供花や果物を飾り、お花に囲まれた華やかな祭壇。その前にご遺族が座られました。「こうして見ていると、ベッドでいつものように寝ているみたいだね」と故人様の顔を懐かしむように眺める方もいらっしゃいました。

距離が近い分、ご遺族との会話もおのずと増えます。ふとした会話から、故人様がカラオケが好きだったことを耳にしました。そう言われてみれば、戒名にも「吟」の字が入っています。通夜が終わると、私はプラスチックのボールとフエルトを筒状にしたものを合わせ、黒いテープで巻き、下部に黒い紐をつけてマイクを作りました。そして翌日の葬儀の朝、玄関に飾られたお孫様と故人様が写った写真の横に、誰に言うでもなく、そっと置きました。

深いつながりから生まれる、
温かな自宅での葬儀。

葬儀の日は、故人様の仕事関係の方も参列にいらっしゃり、部屋がいっぱいになりました。お母様も、故人様のすぐそばで故人様をやさしく見つめていらっしゃいました。その様子を見て、自宅葬っていいものだなと心がじんわりと温かくなりました。

出棺の際、棺の中には私が玄関にそっと置いたマイクが納められていました。息子様が悲しみのあまりか、「もう出棺しよう」とひとこと言うと、棺は閉じられ、故人様は旅立たれました。

葬儀がすべて終わったあと、喪主である息子様から「こんなにいい葬儀にしてくれてありがとう。次もあなたにお願いしたい」と感謝の言葉を何度もいただき、ご親族の方には「子どもたちに身内をきちんと送る葬儀を見せることができて良かった」とも言っていただけました。

ご遺族同士の深いつながりがあるからこそできる、手作りの自宅葬。そのつながりに私たちも加わり、葬儀のお手伝いができる喜び。温もりのある故人様とご遺族のお別れのひととき。改めて葬儀のあり方を問い直す葬儀でした。

担当者想い

担当者:尾形 孝治

担当者想い

こんな時代だからこそ、自宅葬は見直されるべき。

東京だけでなく、全国的に、核家族化や住居の問題で、自宅葬が減っています。通夜・葬儀などの儀式を行わない直葬など、葬儀は簡素化傾向にあります。しかしこんな時代だからこそ、自宅葬は見直されるべきではないかと思っています。自宅葬は会館での葬儀以上に、「人と人とのつながり」を感じることができます。それはご遺族の間のつながりであり、ご遺族と私たちのつながりです。準備や手配などお互いに大変かもしれませんが、私たちも家族の一員になったように、家族ぐるみの温かい葬儀を作ることができます。