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「最期の、ありがとう。」ティア
国分寺市

お供え物がつなげる故人様とご遺族の絆。

担当者
矢ノ﨑 佑樹
施行会館
ティア大幸

故人様と姉弟だけの、シンプルな葬儀。

葬儀の参列者は故人様の長男様、長女様のお2人だけでした。お母様である故人様は享年100歳。旦那様は30年ほど前に先立たれ、故人様、長男様、長女様の3人で同居されていました。長男様、長女様にお子様はいらっしゃらず、ご親族も遠縁、コロナ禍ということもあって、シンプルな葬儀となりました。

お打合せは、長男様と長女様のお2人と行いました。故人様は歳を重ねても、やれることは自分でやるという気概のある、活動的な女性でした。それゆえに介護生活はそれほど長くはないようでしたが、姉である長女様が主にお世話をされ、ご苦労もおありになったとのこと。長女様がお話になる故人様との思い出に、弟である長男様は「そんなこともあったなぁ」と相槌を打たれていました。慣れない喪主を務めるため、不安もあったのでしょう。長男様は多くを語らず、物静かな印象でした。私はそんなお2人の様子を見て、長男様には式進行のお話を中心に、長女様にはなるべく故人様との思い出話をお聞きするように心がけました。

お寺様の法話で「お亡くなりになっていても、故人様は耳が聞こえる」という話を聞いたことがあります。ですから私は、どんな葬儀の時も、なるべく故人様に近い場所で、ご遺族の方々から故人様との思い出をお聞きするようにしています。故人様が長女様の語る声を聞いて、親子の絆を感じていただけるように願いながら、式の合間合間で長女様のお話をお聞きしました。

イチジクは皮をむき、スイカはカットして。

会館でのお打合せ後、納棺の儀、通夜を終えて、お2人は一旦ご帰宅されました。私は翌日の葬儀の準備に取りかかりました。まずは打合せ時に故人様がお好きだとお聞きしていたスイカとイチジクを用意しました。季節柄、イチジクがなかなか見つからず、いくつか近隣のスーパーを回り、ようやく手に入れることができました。

私はお供え物、とりわけ柩に入れていただけるお供え物を大切にしています。昨今、時代や生活環境、葬儀のスタイルの変化により、故人様とご遺族の方々が、通夜、葬儀の間でともに過ごす時が減り、その心の距離感が遠くなってしまっているのではないかと感じることがあります。その距離感を縮め、故人様とご遺族の絆を深めるものの一つが、お供え物だと考え、ご遺族から故人様のお好きだった物などのお話をお聞きできれば、必ずご用意するようにしています。イチジクは食べやすいように皮をむき、スイカはカットしました。スイカに添える塩も別に用意して、美味しく食べられる状態にし、冷蔵庫に入れた後、その他の準備とともに、式に向けて自らの心を整えました。

お供え物に、お母様の笑顔が浮かび、胸がいっぱいに。

葬儀当日。祭壇の横には長男様、長女様の2席。式場ががらんとして寂しさを感じさせないようにテーブルなどを配置し、家庭の部屋ほどの広さにしました。
最期のお別れの時、花を手向けた後、用意しておいたスイカとイチジクを舟の形をした容器に綺麗に盛り付け、「勝手ながらご用意させていただきました。柩に入れて差し上げてください」と長女様に手渡しました。長女様は表情を変えることなく「ありがとうございます」と一言だけ言って受け取られ、柩にさっと入れました。私は、ひょっとして喜んでいただけなかったのか、むしろ失礼なことをしてしまったかと不安になりました。葬儀後、仮祭壇を設けるため、ご自宅にお伺いした時も、長男様、長女様ともにほっとした表情でいろいろなお話をしていただけたものの、お供え物について触れることはありませんでした。
少し不安は残っていたものの、しばらくして長女様からお手紙をいただきました。

「たくさんのお心使いをいただき感謝しております。ありがとうございました。特に出棺の際の無花果とすいかをいただいた時は、家族ですら気配りできないことでしたので、胸がいっぱいになり、満足にお礼も申し上げなかったと思います…矢ノ﨑さんからいただいたやさしい心使いに、満面の笑みをうかべた母の顔が目にうかびました…」

あの葬儀の時は、長男様も長女様もきっと、大切なお母様を亡くした悲しみと葬儀を行う不安で胸がいっぱいになり、感情を表すことができなかったのでしょう。お母様の顔を思い浮かべながらしっかり見送り、喜んでいただくことができて本当によかったと、胸をなでおろしています。あのお供え物によって、故人様と長男様、長女様の絆がつながれ、深まっていることを願っています。

担当者想い

担当者:矢ノ﨑 佑樹

担当者想い

葬儀と向き合い、お客様と向き合う。これまでの経験が自信につながります。

私は、葬儀の施行に100点満点はないと思っています。必ず改善の余地があると省みながら、一つひとつの葬儀と向き合い、お一人おひとりのお客様と向き合うようにしています。これまで失敗したことも何度もあります。しかし、これまでの自分の経験が、自信につながっていくと信じて日々取り組んでいます。今回の葬儀での経験もまた糧とし、今後もお客様のご希望に応える良い葬儀をしてきたいと思っています。