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- 葬儀の中に光る故人様「らしさ」。
葬儀の中に光る故人様「らしさ」。
- 担当者
- 小島 菜穂美
- 施行会館
- ティア越谷
再びつながったご縁から。
ご依頼をいただいた時、故人様のお名前を伺って「ハッ」としました。その方は、地域の活動で何度かご一緒し、お酒を飲みながら楽しく語らい合った方だったのです。
「僕の葬儀は小島さんのところで取り仕切ってもらおう」。
会うたびにそうおっしゃっていたものの、実際にその時が来ることを感じさせないほどお元気で、快活な方でした。
伺ったところによると、しばらくの間、病気で入院していたということでした。ご夫婦には一人息子がいらっしゃり、ご依頼は喪主様であるその息子様がインターネットで当社を探し当て、「ここなら我が家に合った葬儀をしてくれそうだ」とご指定くださったそうです。
私は、故人様や奥様が私と知り合いであることを知らない息子様がティアを選んでくださったことに驚きました。そして故人様の人生の最期に立ち会わせていただくご縁を強く感じたのです。
喪主様のご意向と故人様のお人柄を考えて。
大手企業に勤務し、ご両親と離れて都内で暮らしていらっしゃる喪主様は、物静かな方でした。葬儀についてはご自身の会社の方が参列されることもあり、「一般的な形式で礼儀を重んじる葬儀を滞りなく行い、いらした方々を大事にお迎えしたい」と考えていらっしゃいました。
一方、美容関係の自営業をなさり、業界に多くの弟子や友人をもち、地域活動や卓球・将棋・カラオケなど趣味の集いにも積極的に参加していた故人様の交友関係は広く、菩提寺のご住職も故人様と杯を交わす仲。葬儀には多くの方が参列して、アットホームなムードになることが予想されました。奥様は葬儀について息子様に任せていましたが、社交的で温かい故人様の人柄を参列した方々と偲びたいと考えていらっしゃるようでした。
喪主様が考えるフォーマルな葬儀、そして残された奥様も満足されるような故人様のお人柄を感じさせるような温かい葬儀をどのように作り上げるか、私は一生懸命に考えを巡らせました。
まず通夜での読経の前、一般ご参列の皆様が着席したタイミングを見計らい「喪主よりご挨拶」の時間を設けました。葬儀の進め方は地域によって違いがありますが、関東地方の多くは、通夜の参列者は焼香してすぐ通夜振る舞いの席に移ります。そのため喪主がお礼を伝えられない人が出てくることもあります。そういったことがないように、挨拶の時間を通夜の始めに作ってお礼の気持ちをしっかりお伝えいただけるようにしました。
さらに家族同然の付き合いをしているご近所様に、故人様が大好きだったカラオケのマイクを手作りしてもらうことにしました。受付をしてくださったこのご近所様も、やはり私の親しい方で「ほかにお手伝いすることがあればさせてください」と言ってくださいました。その言葉に感激した私は、「では……」とマイクを作っていただくことにしたのです。すると、お通夜当日、本物と見まがうほどのものを作ってきてくださいました。「こんな素敵なマイクを納めたら、故人様はうれしくなって歌いだすかもしれませんね」、そんな言葉が出るほどの出来栄えでした。この手作りのマイクは将棋盤と共に通夜から告別式までの間、式場に展示することにしました。
また奥様が準備された遺影写真は、お二人が可愛がっていた愛犬と一緒に写ったものでした。あまり例のないことでしたが、あえてそれを準備された奥様のお気持ちを大切にしたく、愛犬を抱いたお姿のまま祭壇に飾らせていただきました。
通夜が始まりご住職が読経を終えると、遺影をじっと見つめて言いました。 「いい笑顔だ。愛犬と一緒の遺影なんて何十年も僧侶を務めていて初めてです。でもいいんです。〇〇さん(故人様のお名前)らしいじゃないですか」。
すると「どこに行くにも一緒だったから」「素敵な笑顔だ」と会場のあちこちでささやき声が起こり、参列者は涙しながらもやさしく遺影を見つめていらっしゃいました。
最大の親孝行をなされた喪主様。
翌日もしめやかに告別式が執り行われ、お別れの花入れがひと段落した時、通夜の後に私が作っておいた卓球台や卓球ラケットを奥様に手渡し、棺に納めていただくようお願いしました。さらにご近所様手作りのマイクも渡しました。
「小島さん、いつの間に作ってくださったの!ありがとう、本当にありがとう」。
奥様はその品々が細かい手作業によるものであることが一目でわかったようで、一瞬驚いた表情をされ、涙を流しながらご近所様と私の手を握り、声を震わせて言ってくださいました。少し広がりかけていた参列者の輪が、その声を聞きつけ「何があったの?」というように棺の周りに集まると、皆に見守られながら、故人様ゆかりの品々が奥様の手によって棺に納められました。そして、私は用意しておいた歌詞カードをそっとマイクのそばに添えました。
こうして通夜から告別式にかけて、故人様と親しかった方々の温かい言葉や笑顔が交わされました。そして私たちティアのスタッフが連携を取りながら静かに進行していたこともあり、葬儀は穏やかでアットホームな雰囲気となりました。
「しっかり喪主を務め切らなければ」と当初は緊張で堅い面持ちの喪主様でしたが、会場の雰囲気に包まれて徐々にその表情は和らぎ、お母様をやさしい眼差しで見守っていらっしゃいました。
初めて喪主として葬儀を執り行い、200名からの参列者をしっかりとお迎えし、故人様を見送られた息子様は、奥様にとってまた一つ大きな自慢の種になったことでしょう。そして喪主様はお母様に最高の親孝行をなされたこと、微力ながら私もそのお手伝いをさせていただいたことをうれしく感じました。
担当者の想い
担当者の想い
ご遺族様と同じ気持ちで式を作り上げたい。
葬儀を担当すると、ときおり涙が流れてしまいます。「プロとしていいのだろうか」と自問自答することもあります。しかし、同時に大切な方を亡くされたご遺族様の気持ちを我が事として感じとることも大切です。ご遺族様によっては、「こんな葬儀にしたい」という気持ちを言葉として表現できない方もいらっしゃいます。そのため言葉だけでなく表情や行動、その場の空気などからも、ご遺族様の想いを感じ取るように気を配っています。
100家あれば100通りのご葬儀の形があるはずです。パターンに流されることなく、故人様のそれまでの人生を称え、喪主様やご遺族様の想いを形にしたご葬儀をスタッフと共に創り上げることを心掛けています。